アンティークといえばイギリス、そう連想する方も多いのではないでしょうか。
今回は、そんなイギリスアンティークの家具の中から、チェストをピックアップしてご紹介したいと思います。
収納家具として欠かせないチェストですが、存外こだわらずにプラスチックのものなどで済ませて、クローゼットの中にしまいこんでいたりはしませんか?もちろんそれでも不便はないかもしれませんが、ちょっと味気ないですよね。
チェストだって立派なインテリア。デザインにこだわって、ぜひお部屋のコーディネートに取り入れてあげてください。
インテリアとして楽しむチェストとしておすすめしたいひとつが、イギリスアンティークのチェスト。イギリスアンティークチェストは、トラディショナルな落ち着いたデザインのものから華やかさを備えたものまで、多くの魅力的なデザインのものがあります。
そこで今回は、あなたにぴったりなチェストとの出会いの手助けとなるよう、そのデザインに徹底注目!家具選びの際はぜひ参考としてみてくださいね。
目次
そもそもチェストってどんな家具?
イギリスアンティークチェストのデザインの解説に取り掛かる前に、まずは「そもそもチェストってどんな家具?」ということから押さえてみましょう。
チェストとは、引き出しを持つ収納家具、日本でいう衣装箪笥や整理箪笥にあたる家具となります。正式には「chest of drawers(チェスト・オブ・ドロワーズ)」となり、それが略されて「チェスト」と呼ばれているのですね。
チェストのルーツは、箱に蓋がついた形の「コファ」という家具で、貴重な衣類などを収納していました。その後、箱の下部に引き出しのついたミュールチェストなどを経て、現在のチェストのかたちへと姿を変えてきたのです。
ちなみにコファは、ベンチやテーブルのようにも使われていたので、様々な家具のルーツであるともいえます。興味のある方は、便利に使える収納家具としてコファ(ブランケットボックス)なども視野に入れてみても良いかもしれませんね。
さて、そんな歴史あるチェストですが、前述のように日本では箪笥に当たるということもあって、衣類を収納するそこそこの大きさのある家具、というイメージが強くはありませんか?そしてそうなると、寝室などプライベートな空間で使う家具になりがちですよね。
しかしながら、実用性だけでなくデザインにもこだわりぬく西洋アンティーク、ひいてはイギリスアンティークチェストは、リビングなど、人目に触れる機会の多い場所に置いてもしっかりと見映えする、とても素敵なチェストなのです。また、サイズも小さなものから大きなものまであるので、様々な用途やシーンに取り入れて活躍させることができますよ。
それでは次からお待ちかね、イギリスアンティークチェストのデザインについてご紹介していきます。
あなたにピッタリなデザインはどれ?
一口にイギリスアンティークチェストといっても、その歴史はもちろん長く、様々な変遷を経てきたためデザインは多様です。落ち着いたトラディショナルな佇まいのものもあれば、フランス趣味のクラシカルで華やかな雰囲気のものもあり、きっとあなたの「好き」にヒットするデザインのものが見つかりますよ。
ここからはイギリスアンティークチェストのデザインについて、木材の違いから、脚部やフロントラインなどデザインのポイントとなる部分を取り上げてご紹介していきますので、しっかりとチェックしてくださいね。
まずは木材に注目
細かなデザインの前に、まずはイギリスアンティークチェストのベースとなる木材について注目してみます。「え?木材?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、木材によっても杢目や木肌でチェストの表情が変わり、印象が左右されますよ。ベースは大切です。
イギリスアンティークで多く用いられる木材として、オーク材、ウォールナット材、マホガニー材、そしてパイン材の4種類が挙げられます。ここでは、この4種類の木材について簡単に解説していきます。
はっきりとした木目が美しく重厚感のある、オーク材
ヨーロッパに多く生育していたオーク材は、古くから多くの家具に愛用されてきました。その特徴は、堅牢にして重厚。耐久性に優れたオーク材は、まさしく家具にぴったりな木材であるといえます。
また、オーク材はそのはっきりとした木目の美しさも魅力のひとつです。切り出した丸太を板にする際の挽き方により「板目」と「柾目」の2種類の木目の出方があることをご存知の方も多いかと思いますが、オーク材はとくにこの「柾目」での木目の模様が美しく表れ出ます。
オーク材の代名詞ともいえるのが、「虎斑」あるいは「銀杢」と称される杢目。好き嫌いがわかれるようですが、虎の毛の模様のように表れ出た杢目が木色のなかに仄白く浮かび、目を楽しませてくれます。また、この虎斑のあるオーク材は、上質なオーク材であるという証でもあります。
オーク材の家具には深みのある濃い色のものもあれば明るい色のものありますが、本来の色味はベージュのようなナチュラルな色味をしています。時代時代で、流行に合わせて塗装が施されているのですね。
オーク材と一口に言っても、杢目や色によってその表情は様々に変わるので、ぜひその違いも楽しんでいただきたいところです。
また、オーク材は日本でも親しまれてきた木材であるので、日本の家具とも合わせやすいのが嬉しいポイントです。和洋を組み合わせても程よく馴染むので、そういったインテリアを楽しみたい方はぜひオーク材のイギリスアンティークチェストを選んでみてくださいね。
あたたかみのある木肌が魅力の、ウォールナット材
オーク材同様、家具に用いる木材として主流だったのが、世界三大銘木のひとつと謳われるウォールナット材です。ウォールナット材の特徴といえば、木目に締まりがあるためオーク材などと比べると収縮や歪みが少なく、加工性にも優れ、また堅牢さも備えている点でしょうか。高級家具材として優れた性質をもった木材であるといえます。
また、その木目は緻密で、不明瞭な木目は味わい深い美しさがあり、どこかあたたかみを感じる表情を見せてくれます。
4枚のウォールナットの突板で描くシンメトリーな杢目が美しいライティングビューロー。
17世紀中頃になると、ウォールナットのような堅い木材も薄くスライスできるようになるなど、家具の製造にも関わる技術が発展していきます。それにより、突板を用いた家具が多く作られるようになり、この後ご紹介するインレイやマーケットリー、パーケットリーなどの細工も発達し、家具をより美しく仕上げられるようになっていきました。そして、ウォールナット材のその性質は、そのような新しい技術に応じることができる木材であったため、その頃には絶大な人気を博す木材となったのです。
その木目の美しさから、杢目を活かしたウォールナットの突板が用いられた家具がたくさんあります。無垢にこだわりをお持ちの方も多いかとは思いますが、突板だからこそ表せるデザインには、目を見張るものがあります。ぱっと目を引く華やかさを備えた杢目のものなどは、インテリアに取り入れれば存在感抜群なので、ぜひウォールナット材ならではのイギリスアンティークチェストを堪能していただきたいです。
艶やかな木肌に繊細な杢目が高級感を漂わせる、マホガニー材
18世紀に入り、それまでのオーク材やウォールナット材にとって代わって大ブレイクしたのが、ウォールナット材と同じく世界三大銘木と謳われるひとつ、マホガニー材です。(ちなみに補足として入れておくと、三大銘木のあとひとつは北欧家具でよく用いられる、チーク材です。)
マホガニーの特徴として、まずオーク材やウォールナット材よりも材質がやわらかいという点があります。それでいて頑丈であり、軽く、木目は繊細で美しいとあって、まさに理想の家具材といっても過言ではありません。オーク材やウォールナット材では表現できなかった繊細なデザインが可能になり、マホガニー材の家具はよりデザイン性の高い、美しいものが多く作られるようになりました。
赤味を帯びた褐色が特徴のマホガニー材は、「赤い黄金」とも称される高級木材(ちなみに、赤味を帯びているのは心材、丸太の中心部分です)。リボン杢と呼ばれる縞模様など、その木目は上品で美しく、高級感を漂わせます。
残念ながら、大ブレイクしたが故に伐り尽くされたマホガニーは、現在ではワシントン条約によりその取引は制限され、今となっては希少な木材です。そこまで人々を魅了してやまなかったマホガニー材。そのマホガニー材でつくられた家具たちには納得の美しさを見ることができます。
高級感漂う美しいイギリスアンティークチェストをお求めであれば、マホガニー材のイギリスアンティークチェストは理想にかなう選択であるといえますよ。
やわらかな風合いがナチュラルでやさしい、パイン材
こちらのチェストは日本の家具ブランド「THE PENNY WISE」のものですが、イギリスの職人により伝統的な工法で作られています。
ここまでに挙げたオーク、ウォールナット、マホガニーとはがらりと雰囲気が変わってくるのが、パイン材のイギリスアンティークチェストです。ここまでの3つの木材と異なり、パイン材は庶民になじみの深い木材となります。パイン材の家具といえば、カントリースタイルのインテリアには欠かせませんよね。
パイン材の特徴は、やわらかくあたたかみを感じる木肌です。節が多く見える点も、ナチュラルな風合いが増してかえって好ましく感じられます。ただそのやわらかさ故に、キズがつきやすく、虫食い被害に遭いやすいという点がちょっとした難点。そのため、そのままではなくペイントを施されて使用されることも多くありました。
そういった理由から、良好なコンディションのパイン家具と出会うのは、なかなか難しいかもしれません。ですが、そのようなキズや虫食いも含めて味と感じさせるのが、パイン材の魅力かもしれませんね。シャビーシックなインテリアスタイルなどには、かえってぴったりであるともいえます。
チェストではなくサイドボードですが、カントリー調がかわいらしいパイン材の家具です。
また、パイン材の家具は先ほど述べたように、庶民になじみの深い家具です。そのデザインは、他の木材でつくられた家具と比べると、ぽってりとしたフォルムの、素朴なものが多くなってきます。ナチュラルな木肌に素朴な佇まいは、ここまでにご紹介した3種類の木材のものよりも気軽にインテリアに取り入れられそうだと思いませんか。
ナチュラルやカントリーな雰囲気のインテリアがお好みの方はもちろん、肩ひじ張らずにアンティークを楽しみたいという方は、パイン材のイギリスアンティークチェストを迎え入れてみてはいかがでしょうか。
脚のデザインも必見
イギリスアンティークチェストの印象を決めるデザインのひとつとして大きな役割を果たしているのが、その足のデザイン。高脚だったり短い脚だったり、ストレートだったり曲線を描いていたり…と、そのデザインは多岐に渡ります。「たかが脚でしょう?」と侮るなかれ。どっしり構えたチェストがお好みの方もいれば、優美な佇まいのチェストがお好みの方もいるでしょう。脚のデザインひとつとっても、やはり受ける印象がだいぶ異なってくるのです。
そんな脚のデザインの中から、当店アンティーク家具ラフジュ工房にやってくるイギリスアンティークチェストでよく見るものを中心に、4つの脚のデザインをピックアップしてご紹介します。
アンティークの定番。カブリオールレッグ
まずは、アンティーク家具といえば思い浮かべる方が多いであろう脚の形の定番、カブリオールレッグ。いわゆる「猫脚」のイギリスアンティークチェストです。「カブリオール」とはフランスのバレエ用語で、跳躍を意味します。たしかに躍動感のあるしなやかなラインですよね。
カブリオールレッグはS字に描かれた優雅な曲線が美しく、イギリスアンティークチェストの立ち姿をラグジュアリーに、エレガントに印象付けます。
前述のように日本ではよく猫脚と呼びますが、カブリオールレッグは猫に限らず様々な動物の脚を模しています。
脚先のデザインも多種多様で、左のカブリオールレッグなどはなかなかインパクトがあるのではないでしょうか。これは「クロー・アンド・ボール」と呼ばれ、鳥が卵を、あるいは龍が玉を掴んでいるデザインで、シノワズリ(中国趣味)の影響がうかがえます。カブリオールレッグの中では重厚感のあるデザインですね。他では、真ん中の脚先は蹄のようなデザインが軽やかで、右の脚先はまるみを帯びてやわらかな印象です。
ちなみに、動物の脚を用いたデザインは、古くはエジプトや中国など東洋で用いられ、17世紀頃にヨーロッパに至って広がっていきました。その後様々なデザインが生まれましたが、時代が進むにつれて徐々にS字は緩やかになり、流行は直線的なデザインに移り変わっていきました。
先ほどの3種類のカブリオールレッグでいえば、右のものなどはS字がほぼとれたすっきりとしたデザインですよね。S字の程度によっても印象が変わってくるので、選ぶ際にはその点も着目したいところです。
イギリスアンティークの中でもかっちりとし過ぎないエレガントさをお求めの方には、このカブリオールレッグのイギリスアンティークチェストがおすすめです。見せて魅せるインテリアとして楽しめること間違いなしですよ。ぜひ脚先のデザインまでこだわって選んでみてくださいね。
エレガントさが加わる。ツイストレッグ
アンティークを代表するぱっと目をひく特徴的なデザインのひとつといえば、このツイストレッグではないでしょうか。ツイストレッグというだけでもアンティーク家具!という感じがしませんか。現代の家具ではなかなか見ないデザインですよね。そんなツイストレッグはヨーロッパで17世紀に流行し、時代の流れとともに一度は廃れましたが、その後19世紀に入り人気が再燃しました。そのアンティークらしい姿は、今なお愛好する方々がたくさんいます。
ツイストレッグは正式には「バーリー・シュガー・ツイスト(あるいはバーリー・ツイスト)」といい、その名は溶かした砂糖をねじったお菓子(ねじり飴)に由来しています。このツイストレッグも、2本のツイストが絡んだ「ダブル・ツイスト」や、螺旋が緩く細かな「ツイスト・ターン」など、捻り具合などの意匠で様々な種類があります。が、なかなか分類するのが難しいです。こちらのふたつも、同じような、右の方が捻りは緩やかなような…。
ともあれ、ツイストレッグはエレガントな華やかさをプラスし、色濃いアンティークらしさをとことん楽しむことができます。これぞアンティーク!というデザインのイギリスアンティークチェストをお探しなのであれば、ツイストレッグのイギリスアンティークチェストはぴったりですね。
しっかりとした安定感。ブラケットフィート
安定感のあるかっちりとしたスタイルがお好みの方であれば、ブラケットフィートのイギリスアンティークチェストがしっくりくるのではないでしょうか。ブラケットフィートはご覧のようにしっかりと構えた重厚感のあるデザインの脚となります。
ブラケットフィートは、ブラケット、つまりは棚などを支える受け木に似ていることからその名が付きました。正面とサイドを台座のようにブラケットフィートが囲んでいるため、つくりも見た目も安定感は抜群です。
一見するとシンプルにも思えますが、曲線で縁取られたその意匠は、さりげなくともクラシカルな雰囲気漂う高いデザイン性が感じられます。それでいて脚自体はそれほど存在を主張してこずに全体のデザインに馴染むので、チェスト本体の木目の美しさなどを邪魔することなく引き立ててくれる、まさに縁の下の力持ちといったタイプの脚ですね。
重厚感を感じる家具が好き、落ち着きのあるクラシカルなインテリアを楽しみたい。ブラケットフィートのイギリスアンティークチェストはそんな方にぴったりなおすすめのチェストですよ。
すっきりシンプル。テーパードレッグ
多様なデザインのアンティーク家具の中でも一等シンプルなのが、このテーパードレッグ。すらりと伸びた脚はただ真っ直ぐなのではなく、先に行くにつれてすっと細くなっているのが特徴です。どっしりと構えたデザインのものが多くみられるイギリスアンティークチェストですが、洗練されたシルエットの脚がつくことで、印象が軽やかになりますね。
テーパードレッグはアンティークの歴史の中でも比較的近しい頃に多く用いられるようになり、現代にも続くシンプルモダンなデザインとして好まれている脚のスタイルです。
そんな現代でも馴染みのあるテーパードレッグのイギリスアンティークチェストは、現代の家具と組み合わせてもあまり違和感がありません。アンティークを色々と揃えるのは難しいけれど、今のインテリアにアンティークな雰囲気をちょこっとプラスしたい方などにはぴったりですよ。チェストの装飾などでアンティークらしさを楽しめながらも、テーパードレッグのおかげかこてこてのアンティーク!という印象ではないので、アンティークの初心者さんにもおすすめです。
フロントのラインで雰囲気も変わる
脚のデザインに続いて、イギリスアンティークチェストの注目したいポイントは、フロント部分のデザイン。ここでいうフロントとは、引き出しの前板部分の装飾ではなく、チェストを上から見た際にフロント部分が描くラインを指してのご紹介となります。「そんなに重要…?」と思われるかもしれませんが、こちらももちろん捨て置けない要素なのです。フロントラインが異なるだけでも、佇まいがだいぶ変わってきますよ。
異なる3パターンのフロントラインのイギリスアンティークチェストを取り上げてみますので、ぜひ比較してみてくださいね。
すっきりとした直線のフロントならかっちりとした佇まいに
一番ポピュラーなフロントライン言えば、やはりすっきりとした直線のものでしょう。直線が与えるイメージには、高級感であったり、男性的なイメージであったりというものがあります。そう考えると、なんとなく英国紳士然とした立ち姿に見えてきますね。
フラットな箱型はかっちりとしたスマートな佇まいで、オーソドックスなシルエットはシーンやコーディネートを選ばずに使うことができます。そのため、フロントラインが直線のチェストは、比較的取り入れやすいイギリスアンティークチェストであるといえますね。
フロントラインが直線であると、チェスト本体がフラットな印象である分、ブラケットフィートやテーパードレッグのイギリスアンティークチェストを選べば、重厚感のある落ち着いた印象が強まり、カブリオールレッグやツイストレッグを選べば華やかさや軽やかさがプラスされて上品な印象になります。シンプルであるからこそ、引き立つ魅力がありますよね。
重厚で静謐さを感じるインテリアや、飽きのこないシンプルなフォルムの家具がお好みの方であれば、フロントラインが直線のイギリスアンティークチェストを選んで間違いなしですよ。
ボウフロントなら落ち着きのある佇まいに
続いてはまろやかな弧を描く、ボウフロントです。ボウフロントは「ボウ」、つまりは弓なりのラインを描くフロントラインのものを指します。先ほど直線のイメージには高級感や男性的といったものがある、とご紹介しましたが、曲線は、やさしい、女性的なイメージを有しています。直線のフロントラインのチェストを英国紳士と例えましたが、ボウフロントのイギリスアンティークチェストはたおやかで悠然とした淑女のようですね。
フロントラインが弧を描いているということは、つまりは引き出しの前板も弧を描いているのです。当然、フラットなものよりも製作の難易度は高くなりますよね。そこには大変な手間と確かな技術がうかがえます。
どちらかというと、かっちりきっちりした印象のあるイギリスアンティークチェストですが、ボウフロントによりやわらかなまろみを帯びることで、やさしげな雰囲気が加わります。どっしり構えた落ちつき、というよりは、ゆったり構えた落ちつき、という表現がしっくりきそうな佇まいです。
ゆったりとした落ち着きのあるシルエットに心惹かれたなら、ぜひボウフロントのイギリスアンティークチェストを選んでみてくださいね。
サーペンタインフロントなら優雅な佇まいに
同じように曲線で描かれるフロントラインでもボウフロントとはまた印象が異なるのが、サーペンタインフロントのイギリスアンティークチェストです。サーペンタインとは、サーペント=蛇に由来し、「曲がりくねった」といったような意味となります。その名の通り、ボウフロントとは異なり蛇行したフロントラインとなっています。
サーペンタインフロントはラインが蛇行していることで、正面や斜めからみると陰影で立体感があり、角度によって表情に動きが出てくるのが魅力的です。チェストの美しさをより印象付けてきますね。
その特徴的ななだらかに蛇行したラインはどこか女性らしさを帯び、チェストを優雅で美しい佇まいのイギリスアンティークチェストとして完成させています。このなだらかなラインを描き出すのに、いったいどれだけの手間がかかったことでしょう。サーペンタインフロントのイギリスアンティークチェストには、美しく魅せるデザインに対するこだわりがうかがえます。
美しい家具を追求したい方は、手間を惜しまずにこだわりぬかれた、サーペンタインフロントのイギリスアンティークチェストを選んでみてはいかがでしょうか。
注目したい装飾は?
アンティーク家具というと、大胆であったり繊細であったり、とにかく彫刻が施されている家具、というイメージはありませんか?イギリスアンティークも例にもれず、様々な彫刻がらしさを決める要素のひとつではあるのですが、ことチェストにおいては、すっきりとした意匠のものも多く、存外目立った彫刻が見られません。
そこで、今回は彫刻以外の装飾に着目してご紹介してみたいと思います。一見するとシンプルに見えながらも職人の技が光るその様は必見ですよ。イギリスアンティークチェストを探す際に、ぜひ意識してみてくださいね。
繊細に華やかに魅せる象嵌細工(インレイ)
こちらは後程の章でご紹介するドレッシングチェストと呼ばれる家具です。ご覧いただきたいのは、このドレッシングチェストの随所に施された、「インレイ」と呼ばれる装飾。インレイとは、日本の言葉に置き換えれば「象嵌」と呼ばれる技法となります。
ドレッシングチェストのインレイをご覧いただく前に、もう少し特徴がわかりやすいインレイをご紹介すると、こちらです。象嵌細工とはひとつの素材に異なる素材を象って嵌める技法で、インレイは家具の表面に模様を彫り、そこに他の木材や象牙、貝殻などを嵌めこんで彩るものとなります。こちらの画像ですと、まさに「嵌めこまれている」というのが良くわかるかと思います。
さて、前述のドレッシングチェストのインレイをピックアップすると、こちらになります。ご覧いただくと、引き出しの前板やそのサイド、鏡のフレームや支柱部分に、細いライン状の装飾があることがわかるでしょうか。こういった線状のインレイは「ストリンギング(線象嵌)」と呼ばれます。繊細なラインはシンプルなアクセントながら、そうであるからこその品の良さを感じさせますね。
ちなみに、引き出しの前板部分のインレイは、シンプルなラインではなくちょっとした幾何学模様になっていますが、これはこの後ご紹介する「パーケットリー」というものを用いたインレイとなります。
こちらは別のイギリスアンティークチェストの天板に施されたインレイ。かわいらしい花模様が、杢目の美しい天板にさらなる華を添えています。天板にものを置かずにこのまま楽しみたいですね。
シンプルな家具がお好きという方にも、ストリンギングのインレイなどはチェストを品よく美しく見せてくれるのでおすすめですよ。インレイはシンプルなものから繊細で華やかなものまで様々あるので、イギリスアンティークチェストを探される際にはぜひインレイにも注目してみてくださいね。
職人の技がきらりと光るマーケットリー/パーケットリー
続いてご紹介するのは、寄木張りと呼ばれる技法が用いられた装飾です。イメージとしては、ちょっと違いますが箱根の寄木細工を思い浮かべていただくと近いでしょうか。突板の技術が発達に伴い17世紀~18世紀頃から、それまで主流であったインレイに代わり主体となっていった技法です。
左・マーケットリー/右・パーケットリー
先ほどのインレイは家具の表面を彫り込み嵌めこんで模様を描きましたが、こちらはキャンバスとなる突板に型となる模様をくりぬき、色などが異なる別の突板を嵌めこんで模様を描き出したシートを家具に貼り付ける技法です。
その中でも、花や動物などが絵画的に描き出されたものを「マーケットリー」、幾何学模様が描き出されたものを「パーケットリー」と呼びます。
一見すると絵画的なマーケットリーの方が難易度は高そうですが、左右対称な幾何学模様のパターンを緻密に切り出すパーケットリーの方が、高度な技術を要したようです。まさに職人技ですね。
また、こちらのイギリスアンティークチェスト、引き出しの前板部分に杢目で模様が描かれているのにお気づきでしょうか。「クォータリング」と呼ばれる技法で、こちらも寄木張りの一種となります。1つの木材から4枚の薄い板を切り出し、角度を変えて並べることでシンメトリーの模様が描き出されるのです。ウォールナット材をご紹介する際に用いた画像のライティングビューローも、こちらの技法が用いられています。
ちなみに、突板、化粧張りというと日本ではネガティブなイメージを持つ方も多いようなのですが、突板であるからと言ってクオリティが落ちるわけではありません。突板を英訳すると「ベニヤ」となるのですが、一般に日本でいうベニヤ板を指す単語は「プライウッド」となり、また異なったものなのです。
突板として使用されるものは、なんといっても見映えを決める家具の表面に使うに恥じない、木目の美しい木材なのです。アンティークで言えばウォールナットやマホガニーなどの突板が使われた家具がたくさんありますが、だからといって質が低いと感じることはなく、むしろそのため息がでるほど美しい杢目や高いデザイン性に、うっとりとしてしまいますよ。
少し話が逸れましたが、突板技術の発展によって高まったデザインの美しさを堪能できる、マーケットリーやパーケットリーの施されたイギリスアンティークチェストは必見です。職人技の光る木材の描き出す模様に、ぜひとも魅せられてみてはいかがでしょう。
おわりに
ひとこと「イギリスアンティークチェスト」といっても、様々なデザインの違いがあることが分かりましたね。デザインや装飾の違いは、作られた年代や様式、職人や地方など色々な要素が混ざり合って成り立つものです。
ぜひ、イギリスアンティークチェスト選びの際は、細かいデザインの違いを見つけて楽しみながら探してみてくださいね!