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ボウバックチェアとは

ボウバックチェアとは、イギリス発祥の伝統的木製椅子「ウィンザーチェア」の一形式です。尻形の窪みがある座板に挽物(旋盤加工)の脚や背棒を差し込む同椅子の特徴に加え、弓なりの曲木で背棒を囲う「ボウバック」という背もたれを持つ固有の特徴を持ちます。18世紀半ば頃同国の農家等に現れ、その優れた耐久性や趣により世界に広まりました。

ボウバックチェアの特徴

「ボウバック(弓形背)」の名は、背もたれ(バック)に弓(ボウ)を強く引いたような逆U字形の曲木枠を使うことにちなみます。「フープバックチェア(輪形背椅子)」とも呼ばれ、ウィンザーチェアの初期型で当初主流の、背棒上に笠木(横背板)を付けた櫛形(コム)背もたれを持つ「コムバックチェア」共々、ウィンザーチェアの基本形を成しました。

18世紀末には強度に勝る等の利点からコムバックに代わる存在となりますが、19世紀にそれが復活すると再び併存し、工業化への対応や多くの派生品を生み、同世紀のウィンザーチェア最盛期の一翼を担いました。
また、18世紀から続く分業生産や、頑丈で美しく座り心地や価格に優れた設計は、近代家具の製法や意匠に影響を与えます。20世紀後半以降は衰退しますが、懐かしく、温か味あるその姿や実用性が、今も世界で愛されています。

ボウバックチェアの歴史

「コムバックチェア」の欠点を補うために生まれた

ボウバックチェアは1740年代頃にイギリスの地方家具ウィンザーチェアの新しい形式として出現しました。
17世紀後半頃に現れた、同椅子の最初期型「コムバックチェア」の欠点である、背もたれの強度を増すために考案されたとされ、蒸気で曲げた木枠で背棒を保護する堅牢性と価格の安さにより、次第に人気を博します。

その初期のものはコムバック同様簡素な丸背棒(スティック)をもつスティックバック型でしたが、やがて背の中央に装飾的な背板(スプラット)を施すものも現れました。ボウバック型はコムバック共々ウィンザーチェアの基本形を成し、発展・派生を始めます。

ちなみに、「ウィンザー」の名はロンドン西郊のウィンザー方面から市街へ輸入されたことにより付けられたとする説が有力で、脚と背が別という特徴がその定義にもなっています。

手ごろな値段と丈夫なつくりでボウバックは人気デザインに

18世紀半ばは背棒が扇形に開くファンバック型のコムバックがウィンザーチェアの主流となり、著名家具師チッペンデール風の優美なカブリオールレッグ(猫脚)やH形の貫(ぬき。補強横木)も現れ、座も四角や台形に移行し円形も現れました。
一方、安さと丈夫さで人気を得たボウバックチェアは、同世紀末にはコムバックを抜き主流となります。

ボウバックチェアの人気デザイン「ホイールバック」

なかでも車輪形の透彫がある背板付の「ホイールバック」が人気を博し主流化します。また曲木による牛角形(U字形)の貫「カウホーン(クリノリン)」が多用され、中世様式的な教会窓やドーム曲線を背に採用した「ゴシックスタイル」も登場。それと同時に、笠木が緩み易い弱点をもつコムバックは一旦廃れることとなりました。

ウィンザーチェアの最盛期

19世紀に入ると、膨らみある背棒が特徴の「スピンドルチェア」によりコムバックが復活し、その他の新種・新型のウィンザーチェアも登場。また、猫脚と牛角貫が衰え、生産性の良い手すり子形挽物による「バラスターレッグ」やH形貫が主流となります。
そして、世紀半ばには人口増や用途拡大もあり当時主流の「ローバックチェア」共々、ボウバックチェアはウィンザーチェアの最盛期到来を担うこととなりました。

アメリカン・ウィンザーチェアの登場

一方、アメリカでは18世紀前半にウィンザーチェアの生産が始まり、世紀後半には欧州に輸出するほどとなります。
当初は英国製品の模倣から始まりましたが、次第に現地事情に合わせて発展し、コムバックとの折衷型や背枠と肘掛を一体化させた「コンティニュアスアームチェア」を生むなど、独自の「アメリカン・ウィンザーチェア」を形成しました。

ボウバックをはじめ、ウィンザーチェアのデザインは今も愛され続ける

20世紀後半以降は他のウィンザーチェア同様、パイプ椅子等の普及によりボウバックチェアの需要も下がり始めました。
しかし、実用性と工芸的価値を持つウィンザー家具は北欧や日本等で注目され、新たに意匠や製品を創造する「リデザイン」の動きを生みます。著名デザイナーによる優れた製品が数多く創作され、今に継承されました。

特に日本では、用の美を尊ぶ「民芸運動」と結びつき、多くの椅子が模造されます。それは品質や価格に優れ、海外へも輸出されました。ボウバックチェアも、輸出が衰えたあとも定番品として存続します。
また、本場英国や米国でも生産が続けられ、コムバックと並ぶ、ウィンザーチェアを代表する姿や使い易さ等により、今も世界で愛用されています。

ボウバックチェアの特徴(種類・地域特徴・機能・装飾・各部形状・材料・仕上げ)

種類

その種類には、先ずは曲木の肘掛があるアームチェア型の「ダブルボウバック(米名サックバック)」や、それが無いサイドチェア型か付け足し的な肘掛付の「シングルバック」があり、ホイールバック、ゴシックスタイル、ゴシック的ドーム曲線背棒をもつインターレースボウ、3枚背板のトリプルスプラット、セティ、ロッキングチェア等があります。

生産地域ごとのデザインの特徴

ヨークシャーは背が高めで挽物が太くノッティンガムは低い等があり、アメリカは竹を模した挽物によるバンブーターニングチェアや背棒が一部平らなアローチェア等が存在する、などがあります。

目的別のチェア

回転椅子、クレードル(揺籠)、ライティングアームチェア(書記卓付)等があります。彫刻等の装飾は主に背板に施され、初期は彫刻のないバイオリン形、その後、壺、花瓶、十字架、王冠形等が現れ、チッペンデール等の高級家具意匠を模した彫刻付も現れました。

模様

モミ文、チッペンデール(紐文)、プリンスオブウェールズ(王室紋章)、ホイールバック(透彫のある車輪形)、ブラインドホイール(透彫のない車輪形)、フルールドリス(アヤメ文)等があります。

スポークの形

丸棒や紡錘形(バラスター)に曲線棒等があり、肘掛無しのホイールバック等には座の張り出し(ダブテール)から笠木に伸びる2本の補助丸棒(ブレイシングスティック)が付くものもあります。

貫(ぬき)の形

H形や中棒2本のダブルH形、牛角形、X形、前後左右で囲う箱形等があります。

脚の形

ストラットレッグ(丸棒脚)、バラスターレッグ、猫脚等があります。

材料

ビーチ(ブナ)、アッシュ(タモ)、ユー(イチイ)、エルム(ニレ)等があり、アメリカではメープル、ヒッコリー、オーク(ナラ)、ポプラ、パイン等が使われます。
表面の仕上げには褐色やこげ茶色が多く、屋外用の古いものは緑、アメリカでは赤や黄色等があり、そのほか木地の色を活かした白木的なものなどもあります。

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