お買い物こちら

キーワード検索

アンティーク辞典アンティーク辞典

ゴールドスミスチェアとは

ゴールドスミスチェアとは、イギリスの伝統的木製椅子ウィンザーチェアの一種です。尻形の窪みがある座板に挽物(旋盤加工)の脚や背棒を差す同椅子の特徴に加え、円形の座や輪状の肘掛、補助背棒を持つ等の特徴を有します。18世紀の作家オリヴァー・ゴールドスミスの遺品とされ、均整のとれた姿や合理的な設計が近代の椅子に影響を与えました。

ゴールドスミスチェアの特徴

「ゴールドスミス」の名はイギリスの作家・詩人・劇作家であったゴールドスミス(1728?-1774)にちなみ、その死後つけられます。
1760年代に作られたとされ、彼の死後友人が所有し、その後、現ヴィクトリア&アルバート博物館に寄贈され、その所蔵となりました。

ウィンザーチェアの初期型である、背棒上に笠木(背上横木)が付く櫛形(コム)背もたれを持つ「コムバックチェア」の一種ですが、前述の特徴のほか、座や脚の傾き等、他にはない特徴を有します。しかしその最大の特徴はほとんど装飾を持たない簡素な姿ながら、機能美ともいえる美しさを備えることです。

ゴールドスミスチェアは、ウィンザーチェアの二大種の一つであるコムバックチェアに分類され、そのなかでも、肘掛を備えた「アームチェア」に属します。
そのため、正規的に「ゴールドスミス・ウィンザーアームチェア」などと呼ばれることもあります。

北欧・アメリカなど、様々な国に影響を与えたゴールドスミス・ウィンザーチェア

現代的とも評されるその美しさはアメリカのウィンザーチェアや北欧家具に影響したとされます。
ただ、それらの影響力や完成度に比して同品が存在しないなど謎も秘めています。ゴールドスミスチェアはウィンザーチェアとしての優れた実用性共々、その謎めく美しさで今なお多くの人々を魅了しています。

コールドスミスチェアとウィンザーチェア

ゴールドスミスチェアと同じ構造を備えたコムバックチェアとは?

ゴールドスミスチェアの原形である「コムバックチェア」は、17世紀後半頃イギリス中南部の農家等に現れた地方家具「ウィンザーチェア」の初期型として誕生します。農民や職人が手がけたそれは、主に3脚のアームチェア(肘掛型)で、半円の厚い座に背棒(スティック)と脚がつき、背の中途から前へ湾曲する腕を備えた、簡素ながらもゴールドスミスチェアに繋がる構造を備えていました。

ちなみに、「ウィンザー」の名は、ロンドン西郊のウィンザー方面から市街へ輸入されたことにより付けられたとする説が有力で、脚と背が別という特徴がその定義にもなっています。

その発生から暫くはコムバック型が使われ、18世紀半ばに曲木背枠で強度を高めた「ボウバックチェア」が登場し、その2種を基本として発展・派生しました。
コムバックチェアは18世紀前半から4脚のものが増え、旋盤加工も導入されます。
世紀半ばには背棒が扇形に開くファンバック型のコムバックがウィンザーチェアの主流となり、H形の貫(ぬき。脚部補強横木)や四角・台形に円形の座が現れ、ゴールドスミスチェアとの関連が強まります。
しかし、18世紀半ばにボウバックチェアが現れ、安さと丈夫さで人気を博し、コムバックは一旦衰退することとなります。

ゴールドスミスチェアはいつ誕生したか?

ゴールドスミス氏とチェアの関係

一方、アイルランド出身のオリヴァー・ゴールドスミスは、1756年からロンドンに移住し、同58年頃から著述活動を開始しました。そして、74年に同地で没するまで、小説『ウェイクフィールドの牧師』等を手がけるなどして活動を続けます。その間どのようにしてゴールドスミスチェアを入手したのか等は不明ですが、V&A博物館では1760年から65年頃に作られたものとしています。

また、表面の黒い塗装の下に初期のウィンザーチェアに多い庭用の仕上げと同じ緑の塗装があるため、オリヴァーが屋外で使用したのではないかとも推察されています。そのようなことや、その完成度、アメリカの椅子への影響等から、ゴールドスミスチェアの誕生は18世紀初期に遡る可能性も指摘されています。

オリヴァーの死後、ゴールドスミスチェアは彼の友人で王立人道協会の創設者ウィリアム・ホーズに遺贈され、その子孫が継承しました。そして、1872年に当時の継承者ベンジャミンが死去した際、夫人のレディ・ホーズによりV&A博物館の前身施設に寄贈され、ゴールドスミスチェアとして広く知られるようになりました。

ゴールドスミスチェアの影響

アーコールなど著名家具メーカーのデザインに影響

その後、ゴールドスミスチェアは、その完成度の高さや洗練された姿により、英国で主流となり世界に広まったウィンザーチェアの原型として注目されます。
アメリカのフィラデルフィア辺りで作られた初期の「アメリカン・ウィンザーチェア」がその派生品であると考察され、日本等でも構造研究や複製が作られるなどします。また、北欧等の気鋭デザイナー達の作品やアーコール(Ercol)など著名家具メーカーの製品にも影響を与えました。

世界でたった一脚のみ残されたゴールドスミスチェア――。250年以上の時を経てなお色褪せないその先進性と美しさは、これからも家具の世界に刺激を与え続けることでしょう。

ゴールドスミスチェアの特徴(構造・構造特徴・材料・仕上げ・大きさ)

笠木(かさぎ/背もたれの上部の横木)

背に合わせて前後に湾曲し両端上部に半円・耳状の突起がある、奥側を背棒が貫く輪状の肘掛(アームボウ)は曲木ではなく3つの部材を相欠き接ぎ(ラップジョイント)で組んでいる、肘掛の先端に渦巻状の手置きがありその下に座から伸びる湾曲した肘柱(アームサポート)が接続する、

座面

円形で後部に張り出し(ダブテール)がありそこから放射状に笠木(トップレール)へ伸びる2本の補助背棒(ブレイシングスティック)が付く、張り出し前方に並ぶ背棒はやや扇形に開きつつ笠木と接続する、座は後方に約3度傾斜している、

挽物による「手すり子」状の装飾(バラスター)が施され4脚同様ながら前後で取り付け角度が変えられ左右共々脚の開き方も大きい、

貫(ぬき)

紡錘形(スピンドル)で前後の脚間に1本ずつと左右を繋ぐ1本がH形を成している、等が挙げられます。

構造上の特徴

座の傾斜はそれ以前に例がない、脚や背棒の傾きが円の中心に向けられ肘掛もその同心円状にされるなど合理的かつ先進的な設計が窺える、脚と貫の形状や笠木と座の厚みを同一化するなど無駄のない生産が考慮されている、等が挙げられます。

材料

脚と貫はビーチ(ブナ)、笠木はエルム(ニレ)、座・背棒・肘掛も恐らくエルムが使われており、表面の仕上げは、元は緑色の塗装で、その上から黒塗装が施されています。そして、その大きさは、高さ97cm、幅63.3cm、奥行57.5cmとなっています。

お買い物はこちら