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ヘレンドとは

ヘレンド(Herend)は、19世紀前期から東欧の国ハンガリー西部のヘレンドで操業をはじめた磁器メーカーです。

    ヘレンドの特徴

  • 造形やペイントといった工程が手作業で行われる製造工程。
  • 伝統的な絵柄にシノワズリのエッセンスを取り入れた絵柄。

特長その1:ハンドメイドによって作られる

ハンドペイントによる絵付け

ヘレンドでは形の造形、絵柄のペイントなどの工程で、手作業によるものづくりが行われています。
特に手書きによるペイントは、ペインターごとに微妙なニュアンスの違いを楽しむことができます。

ヘレンド シュガーポット

ヘレンド シュガーポット
ヘレンドの職人は付属養成学校で修練を経た熟練技師が採用されています。産業革命後も「職人の手仕事」を守り続ける製法は、世界中で愛されています。

造形の技法

●「浮き彫り」生地の表面に凹凸を持たせる技法。鱗を浮き彫りとペイントで表現した鱗模様はヘレンドを代表する表現です。

ヘレンド 浮き彫り

●「透かし彫り」生地をくり抜いて模様を作り出す、オープンワークと呼ばれる技法。製品によっては数百もの透かしが成される。中国の精巧な象牙細工を想わせる表現。
●「手捻り」バラなどの花ばなを、花びら一枚から作り出す陶花(造花)等にみられる技法
●「紐細工」細い紐を編んで作るバスケット作品などに見られる技法。スパゲッティワーク(バスケットワーク)とも呼ばれる。

種類

ヘレンドの器種には、茶器・酒器・食器・壺・花瓶等のほか、プレート・彫像・置物・人形(フィギュリン)・時計・優勝杯等の様々があります。

ヘレンド 種類

特長その2:様々な地域の特色を取り入れた絵柄

ヘレンドの絵柄の技法には、大きく分けて3つの特徴があります。

●「ヨーロッパの伝統的な写実画」
●「シノワズリー的な東洋画」
●「ペルシア細密画」

シルクロードにも例えられるほど多彩な国々のエッセンスを取り入れたヘレンドは、これらを巧みに消化することで独特の世界観を作り出しています。
また、ヘレンドの製品に描かれている絵柄の中には、中国で縁起が良いとされている鯉を取り入れたものも。
中東や日本・中国など、東西文化に影響を受けたデザインが見受けられます。

ロスチャイルドバード、アポニーグリーンなど、ヘレンドの代表作

ロスチャイルドバード

ロスチャイルドバードの名前の由来は、ヘレンドに投資をしていたロスチャイルド家の食卓に選ばれたことが由来です。
同シリーズの中でも、皿の淵が鮮やかなブルーで着色され、孔雀の羽根をモチーフにしているとされる鱗模様が浮き彫りで装飾された「ブルースケール」は、シノワズリのエッセンスを感じさせるものとして有名です。

ヘレンド ロスチャイルドバード

ヘレンドにはこの他にも、柿右衛門の影響があるとされる淡い緑「ヘレンドグリーン」の草花紋が描かれた白磁食器「インドの華」
ヴィクトリア女王買い上げの出世作で極彩の蝶と牡丹が白磁に描かれた食器「ヴィクトリア」
元アポニー伯爵向けで東洋風情を濃くしロココ風器形も加えた「アポニー」
1910年代のデザイン帳から復刻された「アピシウスのハーブ」のほか、「清の花籠」等があります。

ハンガリーの磁器づくりの先駆け、ヘレンドの歴史

ヘレンド ロゴ

ヘレンドが創業したハンガリーでは、オスマントルコとハプスブルク帝国に支配された、他のヨーロッパ諸国に比べて1世紀も近代化が遅れていたといわれています。そのため、19世紀に入り、ようやく社会制度や都市の改造、産業の近代化が始まることになります。その一環として、ヘレンドで製磁実験が始まりました。

開業の地”ヘレンド”での磁器づくりは、困難からはじまった

1826年にヴィンツェ・シュティングルがのちのヘレンド窯となる工房を開き、民芸風陶器を焼きながら、改革派のラヨシュ・コシュートらの援助と近郊で発見された磁器原料を得て、長期に渡り製磁実験を繰り返します。
しかし上手くいかず、窯は1840年に債権者モール・フィッシャーに売却されました。

失敗を乗り越えヘレンドはマイセン・セーヴルと肩を並べるブランドに成長

モール・フィッシャーの活躍

フィッシャーは豊富な資金を利用し、生産性の改良や技術の向上に努め、ついに製磁を成功させ、本格的な生産を可能にしました。
1842年には早くもハンガリー産業博覧会で銅賞を獲得し、ヘレンド窯の名声を高め、その製陶事業を順調にします。
しかし、1843年に工場が全焼するという不幸に見舞われました。フィッシャーは力を尽くしてこの危機から立ち直り、年内に工場を再建します。
その後、大衆向けの磁器生産も始めました。
そして、翌年には博覧会で金賞を獲得し、国内向けの生産を改め、マイセンやセーヴル等の名窯磁器に肩を並べる、高級品の生産と、海外輸出を行なう方針を定めました。

ヘレンドの顔の一つとなる、シノワズリの食器が生まれる

1850年代には「エステルハージ」「西安(シーアン)の赤」等の代表作も生まれました。
この頃に、これらシノワズリー風の他、日本風やマイセン・セーヴル風等の様々なデザインが生まれます。
ヘレンドはこれらの様式からエッセンスを取り入れつつ、ブランドの独自性を見事に確立させていきました。

ロンドン万博の成功で、ヘレンドはヨーロッパの名ブランドの一つへ

マイセンやセーヴルの技法を研究し、間もなくその複製的製品で評判となり、有力貴族から次々と注文を受けるようになりました。
やがて独自の製品や技法の確立にも努め、中国の清時代に生み出された粉彩(ふんさい/上絵付け)を取り入れた花鳥紋のディナーサービスをロンドン万博に出品し、見事ヴィクトリア女王買い上げの栄誉を得ます。これにより、東欧屈指の窯に認められます。

1863年には前年のロンドン万博での成功により、オーストリア皇帝から騎士称号と閉鎖された王立磁器製作所の意匠継承がフィッシャーに許されました。
そしてこれを機に、国内外からの注文が急増し、工場の拡大や、施設・資材の増強、そして人員の拡充が図られました。
その後もヘレンド磁器は万博等で人気を博し、著名王侯貴族を始めとする多くの人々から愛されます。 そして、20世紀の荒波を超え、個性ある手作りの高品質を今に伝えることとなりました。

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