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漆器とは

漆とは、ウルシノキという“木”から採取する樹液のこと。
木の樹皮にナイフなどで傷をつけ、出てきた乳白色のものが「生漆(きうるし)」と呼ばる原料です。
漆には強い接着力があり、重ね塗りすることで防水性や強度が増してくのが漆器の特徴。 また表面に光沢が生まれ、見た目にも美しいことから、幅広い分野で古来より利用されてきました。

身近な存在ではあるけれど、以外と知らないことも多い漆。今回は漆を使った様々な品物や、産地・歴史などをご紹介していきます。

漆器の作り方

まずは漆器の基本的な作り方をご紹介します。
産地によって作り方や技法はそれぞれ異なりますが、基本的な工程は以下のような流れが一般的です。

1:素地作り:

木をロクロで削るなどして漆器のもととなる原型(素地)を作ります。

2:素地調整:

漆が染み込みやすく、かつ強度が出るように素地を削ったり、あるいは麻などの布類を被せたりするなど、下地処理を行います。

3:塗り

塗りは下塗りと上塗りに分かれ、下塗りは主に漆器としての強度を高めるために行われます。下塗りを行った後は乾燥をさせ研磨。
この作業を繰り返すことで強度が高まります。上塗りは仕上げとなる漆を塗り重ね、磨き上げていく工程。なお、塗り回数が多いほど高級とされています。

4:装飾

「3」で工程が終わる作品もありますが、これから紹介するような装飾を施し、嗜好・技術品としての価値をより高める作品も少なくありません。

  • 蒔絵(まきえ)
    乾いた漆塗りの素地の上に漆で絵柄を描き、乾かない内に上から金粉を蒔く(まく)ことで、模様を作る技法です。
    漆を塗り重ねることによって、絵柄を立体的に表現する「高蒔絵」ほか、様々な表現を持ちます。また漆塗りを作る国の中で、蒔絵は日本独自の技術です。
  • 沈金(ちんきん)
    刃物で素地に絵柄を彫り込み、その彫り跡に金箔や銀箔、金粉や銀粉、顔料などを漆で接着させる技法です。
  • 螺鈿(らでん)
    漆に彫りこみを入れ、絵柄の形に切り取った夜光貝など貝の真珠層をはめ込む技法です。

漆器づくりには非常に多くの工程があり、それぞれ専門とする職人が手がけるのも特徴です
(産地によっては全ての工程を1人の職人が担う所もあります※横浜・芝山漆器など)。
手順は30~40にも及ぶ場合が大半であり、輪島塗に関しては工程が124もあるというから驚くと共に、高価な品であることに頷けます。

漆の塗り方の種類

漆の塗り方にも種類があり、大きく分けて2つの手法があります。

拭き漆

左:吹き仕上げ 右:朱塗り

  • 「朱塗り」や「黒塗り」
    漆を重ねていくことで漆が完全に下地を覆い、不透明となるため、漆本来の色艶を楽しむことが出来ます。
  • 「吹き仕上げ」
    漆を何度も塗り重ねることなく塗っては拭き取るという作業を繰り返して行くことで、漆が半透明に貼付され、素地である木目が美しく浮かび上がります。
  • お皿やお椀だけじゃない?漆が使われた物の数々

    漆 箪笥

    時代によって作られたものに特徴はありますが、基本的に漆は大抵の物に塗ることができます。
    そのため、ありとあらゆる品が、漆塗りによって作られていきました。 ただ塗りのベースとなる“素地”はやはり木が多く見られ、ヒノキ、ケヤキ、サクラ、トチ、センノキなど。用途によってそれぞれ使い分けられていたようです。

    その他、紙、布、竹、金属など。最近では合成樹脂製の素材に塗ることもあり、1998年の長野オリンピックでは、金銀銅メダルに塗られました(木曽漆器)。また、腕時計の文字盤が漆器製、なんてユニークな品もあります。
    具体的な作品としては、平安の頃では寺院の内装などでよく見られ、そのほか建具や船の内装、家具なども漆を塗る技法は用いられています。

    生活雑貨としての漆の発展

    漆 お膳

    ただ、江戸時代になり大衆に広まると、一気に生活雑貨としての、いわゆる漆器が急増します。
    椀、皿、酒杯、脚付き膳、折敷(脚無膳)、鉢、銚子や徳利といった酒器などの食器類。
    硯箱などの文房具類、煙管筒などの喫煙具、その他各種箱類(文箱、短冊箱)等々。
    私たちが今骨董品として目にする数多く漆器の多くは、江戸以降に作られたものが多いようです。

    また、陶器や磁器に比べ“軽い”という特徴を持つことから、特に持ち運び用の「提げ箱」や「提げ重」として、大いに漆器が活躍、作品も多く残さています。
    「岡持ち」とよばれる料理などを入れて運ぶための木箱。こちらも軽く持ち運びに適していることから漆塗りが施されています。

    岡持ち

    また、近年に近づくにつれ実用品としての漆器もある一方で、芸術作品も数多く作られるようになっていきました。

漆器は「JAPAN」だけじゃない!漆によるものづくりの中心地、アジア圏

漆器

漆器は西洋では「JAPAN」と呼ばれるなど、日本独自の伝統工芸品というイメージが強いですよね。
しかし、原料となるウルシノキが分布しているアジア圏では、古来より各地で見られる技法なんです。
特に東南アジアでは古より漆器づくりが行われていたことが分かっていて、中国、朝鮮、ベトナム、ミャンマーなどが代表的な産地です。 日本での漆器の起源もユーラシア大陸と陸続きであった頃、中国から伝わったとされていますから、かなり古い頃から漆器づくりは行われていたようです。
実際、縄文時代の頃に作れた漆器が、国内でも出土しています。

漆 蒔絵

美しい蒔絵が施された文箱。きらびやかな蒔絵によって、工芸品のような面持ちに。

ただ、古来に作られていた漆器は、朱色や黒色を塗っただけのシンプルなものが多かったようです。 それが奈良時代に入ると「蒔絵(まきえ)」と呼ばれる金銀鮮やかな装飾技法の誕生により、嗜好・美術品として一気に発展。 平安時代になると、宮廷御用達の器としての存在感を高めていきました。
その後さらに技術は進化を遂げ、現在行われている漆器技法の技術の基礎は、おおよそ鎌倉・室町時代にはほぼ確率されたといわれています。

輪島塗をはじめとする、漆器の産地ごとの発展

西洋から工芸品が一気に伝来した戦国時代および安土桃山時代の頃になると、逆に漆器を西洋に輸出するという事業も発達します。 外貨を稼ぎたい各地の大名などがこぞって漆器づくりを手がけたようで、漆器生産は各地で発展を遂げるようになりました。

そして江戸時代の頃になるとさらに進化を遂げ、かつ産地ごとの特徴を持つなどして、日本各地で漆器の生産が盛んに行われるようになりました。

全国各地に産地をもつ漆器

輪島塗 お重

 

歴史や背景、製作技法などはそれぞれ少しずつ異なっていますが、漆器作りは現在でも日本各地で行われており、北は青森から南は沖縄まで、30近い産地があります。

東日本では、津軽塗(青森県)、川連漆器(かわつらしっき:秋田県)、鳴子漆器(なるこしっき:宮城県)会津塗(福島県)、
江戸漆器(東京都)、木曽漆器(長野県)、新潟漆器(新潟県)、村上堆朱(むらかみついしゅ:新潟県)、高岡漆器(富山県)、輪島塗(石川県)、山中漆器(石川県)、金沢漆器(石川県)。

西日本では、越前漆器(福井県)京漆器(京都府)、紀州漆器(「根来塗」も含む:和歌山県)、香川漆器(香川県※高松漆器とも呼ばれる)、宮崎漆器(宮崎県)、琉球漆器(沖縄県)などが代表的。

おそらく多くの方が漆器と聞くと「輪島塗」をイメージすると思いますが、今の漆器づくりの起源とされているのは、和歌山県の「根来塗(ねごろぬり)」だと言われ、輪島塗も根来塗が由来とされているほどです。

江戸から現代まで数多くの名工が誕生

柴田是真(しばたぜしん)の脚付膳

江戸時代の終わりの頃には、西洋で開催される博覧会や展示会などに漆器を出展するようになった風潮もあり、数多くの作り手が誕生しました。

代表的な作家としては、漆工家、印籠蒔絵師、画人など様々な肩書きを持ち、作品においても、煙管筒、文房具、道具類、茶道具など幅広い作品を残している柴田是真(しばたぜしん)はあまりに有名。

その他、白山松哉(しらやましょうさい)、小川破笠(おがわはりつ)、佐野長寛(さのちょうかん)など。特に前出2人は現代に続く漆工芸の礎を築いた人物として高く評価されると共に、数多くの作品を残しています。

また、漆器の場合は蒔絵(特に印籠蒔絵師)や沈金など、それぞれ得意とする技法を持つ作家が多いことが特長です。
近代の作家としては、漆の天才と称された松田権六(まつだごんろく※人間国宝)、大場松魚(おおばしょうぎょ※人間国宝)、高橋節郎(たかはしせつろう)などが有名です。
今まさに作品を作っている現代作家も大勢いるので、気になる方はチェックしてみるといいかもしれませんね。

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