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リヤドロとは

世界中で愛されるフィギュリンを作りだしたリヤドロ

リヤドロ(Lladro. リャドロ)とは、スペイン東部バレンシア北郊の街、アルマセラ発祥の磁器及びそのメーカーです。
アルマセラ出身のリヤドロ3兄弟により20世紀半ばに創業されました。
「ポーセリン・アート」と呼ばれる、精巧で愛らしい磁器人形(フィギュリン)で知られ、その独創性や美しさと相まってスペインだけでなく、世界中の人たちに愛されています。
この記事では、リヤドロの歴史をご紹介しながら、その愛らしい人形たちの製造方法などもご紹介して行きます。

庭に作った窯からはじまった、リヤドロの歴史

 

1953年、地中海に程近いアルマセラの自宅に、ホアン、ホセ、ビセントのリヤドロ3兄弟が窯を開きました。
彼らは十代半ばからバレンシアの美術学校で絵画や彫刻等を学び、父親の影響により陶芸を志します。
当初は庭に築いた地元ゆかりのイスラム式の窯を使い、ランプ用の小さな花飾りを作り、評判となりました。

●リヤドロ発祥の地、スペイン。当時の磁器生産をとりまく背景は?
スペインでは元々、中世以降イスラム由来で”陶器の祖”と呼ばれる、「イスパノ・モレスク陶器」の生産が主流でした。
18世紀初頭に現ドイツのマイセンで磁器の製造が開始されて以来、ヨーロッパでは、東洋の磁器…主にボーンチャイナと呼ばれる純白の硬質磁器を模造する製磁窯が盛んになります。

リヤドロの代名詞となる人形製作へ挑む

需要が増え事業が軌道に乗り始めると、磁器の焼成が可能な高温の窯を導入して、
マイセンやセーヴル風の磁器花瓶等を作り始め、業績を伸ばします。

しかし、リヤドロ兄弟は模造に留まらず、新しい人材を招き入れ、研究を重ねて、新しい独自の磁器人形製作に挑みます。
この試みによって、バレンシア産の灰白色磁土の器体や、4000色もの絵具によるリヤドロ人形が生み出されることになります。

リヤドロのマークに入れられたスペインの文字が物語る思いとは?

1955年、バレンシア市内に店を出して成功し、58年には同市近郊タベルネス・ブランケスに工場を新設して拠点としました。
その後も順調に発展を続け、1960年には早くもリヤドロのマークに世界を見据えた「SPAIN(スペイン)」の文字が入れられます。

リヤドロのセカンドライン「NAO」も登場

1968年には価格を抑えたフィギュリン製品のブランド「NAO」も設立します。

そして1969年、のちにポーセリン・シティと呼ばれる施設の一部が完成し、代表作の一つ、「悲しきピエロ」も発表されます。

●ポーセリン(porcelain)=磁器や磁器製品の英名称

リヤドロは世界中で愛されるブランドに成長

1974年には、のちのハイポーセリン・シリーズとなる、特製作品群「エリートコレクション」、76年にはリヤドロで開発された磁器土「グレス」を使用した製品も発表されました。
1983年には、リヤドロが得意とする陶花を数多く採り入れた「公園通りの花屋さん」が発表され売上記録を更新します。
そして、80年代半ばには従業員が2000人以上の大企業となり、100カ国以上に製品が輸出される、スペインを代表する磁器製品となりました。
また、80年代後半には日本やアメリカを始め、世界各地に販売拠点も作られます。

リヤドロのものづくりは、より芸術性を高め新しい時代へ

90年代には、その人気を狙った中国製模造品に悩まされますが、2000年に現地での裁判に勝利します。
1999年には磁器と宝石・金を合わせた「レジェンド・コレクション」を発表し、2003年にはリヤドロ兄弟から子女らへの経営交代が行なわれました。

アーティストがつくるリヤドロで、新たな一面を見せたリヤドロ

そして、2006年にはスペインの著名アーティスト、ハイメ・アジョンをアートディレクターに、
同7年には著名インテリアアーティスト、ボードー・スペリンを迎えて新たなコレクションをスタート。
以降もアーティストとのコラボ作品によって、芸術性の高い製品づくりが図られ、様々なアーティストによるコレクションが発表されています。
これによって、リヤドロの新しい時代の方向性が見いだされました。

職人たちの技術が光る、リヤドロの人形づくり

リヤドロの製法は、3兄弟による創業時から続く、手作業による分業が基本です。
デザイン・彫刻・塑像・絵付・釉薬・焼成の各部門の高度な技を併せて、質の高い製品が作られます。
ここで簡単ですがその工程をご紹介していきます。

企画

まずは彫刻家がデッサンを描き、絵付師と共に色彩を決定して目指す製品のスケッチが作られます。

原型づくり

彫刻家がクレイモデル(粘土原型)を作り、各部を分割してそれぞれ石膏で型をとりマスターモデル(親型)を製作。
この分割の作業は原型が製品となった際の再現度を高める為に非常に重要な工程です。
リヤドロでは分割を多くすることで、原型と近い精緻な仕上がりを生み出しています。この作業がリヤドロの品質の秘訣となっています。

完成品の製品にも、洋服の柄やシワなども精緻に再現されています。

型作り

そしてマスターパーツからは鋳込み型が作られ、それに特製の粘土液を注入して乾燥後、組み立て作業へ入ります。

組み立て

パーツ接着は粘土液を用い、塑像師がヘラ・刷毛・筆等で原型を忠実に再現します。

リヤドロの技が光る陶花とレース

リヤドロ伝統のアイテムである花は手びねりで花びらの一枚一枚から作られます。
また、レース部分は、実際の布を使用しているのではなく、これも磁器でできていて、布に粘土液をのばして、
レースの柄を写し取るようにして作られています。
この2つの技法はリヤドロの技術力を物語る、フィギュリンの代表的な技法と言えます。

磨き作業

組み立て後は、磨かれて継ぎ目やムラが消され、1日以上乾燥室へ。
その後、絵付師により絵付され、検査を受けて合格品に窯印が入れられます。

施釉

そしてスプレーにより透明釉薬が施され、1350度の高温で24時間近くかけて焼成。最後の検査を経てようやく製品が完成します。

リヤドロ製品の装飾やデザイン

リヤドロの器種は人形が主流ですが、そのほかにも初期の陶花(造花)・花瓶等をはじめ、
彫像・置物(オブジェ)・プレート(飾り皿)・オーナメント(飾り物)・時計・装飾品・酒器・茶器・灰皿・照明・鏡・小物皿・ベル・チェスの駒等もあります。

中央は童話「シンデレラ」をモチーフにしたもの。また、人間だけでなく動物のフィギュリンも。

装飾

初期の陶花、マイセンやセーヴル風の色絵磁器花瓶、絵付なしの白磁やそれに浮彫が入ったもの、リヤドロ独自の淡彩色絵磁器やそれらに金銀彩を施したもの、原料の配合を変えて土のぬくもりを表現したグレス磁器等があります。

デザイン

人形では神話・物語の神や登場人物に、庶民や動物等の様々がモデルとなっており、
人魚やフラメンコダンサー・雛人形・五月人形・力士・仏像等もあります。
その表情や造形表現は、写実的で硬質なものからメルヘンチックで柔和なものまでがあります。
器物等では古代ギリシャ風の連続紋等が用いられた新古典主義式、中国明清代風の龍や草花紋、日本の伝統的紋様を意識したもの等があります。

リヤドロの代表作

リヤドロの技術を集大成させた特製人形シリーズ「ハイポーセリン」、土物陶器の素朴さを磁器で表現した人形シリーズ「リヤドロ・グレス」、
磁器に宝石・金を加えた「レジェンド・コレクション」等があり、各作品の名づけも愛らしく、味わいがあります。

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