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ミントンとは

「世界で最も美しい」テーブルウェアの貴婦人ミントン

ミントン ポット

ミントン(Minton)は、イギリス中南部の窯業地ストーク・オン・トレントに18世紀末から操業をはじめた、陶磁器メーカーです。
金彩色絵のボーンチャイナ(骨灰・軟質磁器)の高級食器・置物等を主として、その品質と芸術性から「世界で最も美しいボーンチャイナ」と称賛されています。
そしてミントンの更なる特徴の一つとして、様々なデザインや技法の開発を行いながら美しさを追求しつつも、
芸術性と生産性を共に重視する姿勢で、独自の発展を成し遂げました。
この記事では、ミントンの歩んだ歴史と共に、美しい磁器製品をご紹介していきます。

ボーンチャイナづくりを目指したミントンの祖国イギリス

16世紀頃からヨーロッパにもたらされた中国や日本独自の鮮やかな硬質磁器ボーンチャイナは、西洋諸国に衝撃を与え、王侯貴族達が競って収集を始めます。
やがて、その模造がヨーロッパ各国で試みられ、18世紀初頭に現ドイツのマイセン窯がいちはやく成功し、各地に広まります。

当時ヨーロッパ諸国では、高度な科学・芸術技能を要する磁器製造は、国の利益に関わる、重要な産業・技術と考えられていました。
原料の発見が遅れたイギリスでも、18世紀半ばに発明されたボーンチャイナによる代用品等が発達しました。

ミントンのはじまり

ミントン マーク

その中で良質の陶土に恵まれたストーク・オン・トレントの各窯が台頭し、初代ミントンも当初はそこで窯元向けの転写版製造で成功します。やがて自身も食器づくりを始めました。当初は「ウィロー・パターン(柳模様)」で知られる白地に青模様を転写する青花(せいか。染付)風の食器を作りましたが、1798年にボーンチャイナの製造を始めます。
しかし、1816年にその製造を中断し、クリーム色の陶器等を作る日々が続きました。そして、1824年に再開され、トーマスの子息で後の2代目ハーバード・ミントンも入社します。

ミントンのものづくりは受け継がれ、名作「ハドンホール」が誕生

ミントン ハドンホール

ミントンの2代目経営者となるハーバード・ミントンは、当初営業の仕事をしていましたが、やがて経営を主導し、その才能を開花させていきました。
そしてミントンは1830年代から再流行したロココ式やヨーロッパ地域の磁器意匠を採り入れ、飛躍を始めました。
1840年にはヴィクトリア女王から初めてティーセット等の注文も受け、その評判により貴族からも注文が入り始めました。

ミントンのベストセラー、ティー・サービス・セットの登場

ミントン ケーキスタンド

芸術性と生産性を重視したハーバードは、デザイナーや技術者等の優秀な人材や、若手の確保を行いました。
テーブルウェアだけでなく、新たにオーナメント(置物)や人形・タイル等を開発し、製品内容の拡大を行ないます。
1845年には新開発の大理石のような生地による「パリアン磁器」の人形を発表して人気を獲得。
また翌年には安価な「ティー・サービス・セット」発売し一般市民の間でベストセラーとなりました。

「世界で最も美しい……」の名付け親は、

そして、1851年、大英博覧会が開かれ、創業以来の全技術を投入したロココ式の傑作「デザート・サービス・セット」出展し、
ヴィクトリア女王一括買い上げの栄誉を受けます。
「世界で最も美しい……」の賛辞は、この時女王が日記に記した一節が元となりました。

ミントンは世界に認められるブランドへと成長

MINTON HaddonHall

1860年代には新しい金彩技法や日本の意匠影響による作品がつくられ、1870年にはフランス・セーヴル窯の技師ルイ・ソロンが入社。
史上最高のパテ・シュール・パテ技法を開発し、翌年のロンドン万博で絶賛されます。
この19世紀末がミントンの黄金期となり、その豪華な作品は世界中の富豪や王侯貴族に求められました。
その後、アールヌーボーやアールデコ等の流行様式を採り入れつつ、激動の20世紀を生き延びます。
1948年にはデザイナーのワズワースによるハドンホールが世界で流行しました。

その後ミントンはロイヤルドルトングループ傘下へ参入

70年代にはロイヤルドルトン窯の傘下となります。
ですが、グループに参入してもなお、それまでの歴史で作り上げてきた定番と、ミントンの名にふさわしい新作を今も作り続けています。

ミントン ロイヤルドルトン

ミントン ワイングラス

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ミントン製磁器の、装飾技法や製法

ミントンが作る磁器製品の種類

ミントン 皿

ミントンの製造品の種類には、茶器・酒器・食器・壺・花瓶等のほか、タイル等の産業用陶器、プレート・彫像・置物・人形(フィギュリン)・時計等の様々があります。

デザイン・絵柄

ミントン 花

中国の青花(せいか)風模様、ルネサンス風の彫像、セーヴル風の金彩濃紺地、写実・浪漫的な細密画が描かれるロココ式、
古代ギリシャ風の連続紋等が用いられた新古典主義式、抽象的草花紋のアールヌーボー式、
日本画等を採り入れたジャポニズム式、シンプルかつ洗練された美しさをもつアールデコ式等があります。

装飾技法

特筆される技法には幾つかあり、一つは気品ある大理石のような美しさを持つ「パリアン磁器」で、長石(ちょうせき)を主成分とする独自で新しい生地が用いられました。

もう一つは1865年に開発された「アシッド・ゴールド」で、酸(アシッド)の腐食により金に浮彫効果を与えるものでしたが、
そののち金を盛りつける「レイズド・ぺイスト・ゴールド(盛金装飾)」も開発されます。

最後は、セーヴルで開発されミントンが完成させたと言われる「パテ・シュール・パテ」で、液状の盛り上げ材を塗り重ねて立体的な装飾を行う技法です。
素地の上に直接液状の盛り上げ材で絵柄を描き込んで行く為、液を塗り重ねた厚みで、立体感と透明感を同時に表現することが出来ます。
非常に難しい技法で、熟練した技術が必要とされている上に、製造に時間を必要としたためこの技法で装飾された作品は非常に高価です。
また、ヨーロッパのものと違い、軟質のミントン磁器は本焼きの温度が低く、濃い色味の素地の製造が可能であった為、
濃い色の素地に淡い色味の装飾の半透明表現が映え、「食器装飾の最高の発明」と呼ばれました。

ティー・サービス・セット、ハドンホール…ミントンを彩る名作たち

ミントン 花瓶

中国風模様と風景が青一色で表現された最初期の青花風食器「ウィロー・パターン」があり、その他では、
1846年発表で「茶器は花柄模様」という概念を英国に広めたとされる花柄の実用茶器「ティー・サービス・セット」に、
ヴィクトリア女王考案の意匠とされる野苺の花や実が浮彫りにされた食器「ストロベリー・エンボス」やその彩色版の「ヴィクトリアストロベリー」
1944年発表でマラカイトブルー(孔雀石色)の帯上に腐食や盛り技法による金の浮彫草花紋を施した食器「アーガイル」
1946年発表でハドンホール古城のタペストリー柄の草花紋が散りばめられた不朽の定番「ハドンホール」や後年発表されたその変種「ハドンホールブルー」、
1964年発表で英国貴族サザーランド家伝来の淡いブルー帯と金彩が鮮やかな復刻食器「サザーランド」があります。

また、日本市場限定の食器もあり、「フォーシーズンコレクション」や「スプリングブロッサム」等が挙げられます。

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