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ローゼンタールとは

ローゼンタール(Rosenthal)は、ドイツ中東部の街、ゼルプで作られる磁器及びそのメーカーです。この記事では、ローゼンタールの器の特徴に加え、創業者フィリップ・ローゼンタールがどのようにして現在のローゼンタールのスタイルを築いていったのか、その歴史もご紹介します。

スタジオラインがヒットを遂げた、ローゼンタールのブランド戦略

ローゼン タール カップ&ソーサー

 

18世紀初頭、現ドイツのマイセンで磁器製造が開始されて以来、ヨーロッパでは中国や日本の磁器を模造する製磁窯が各地に勃興しましたが、その多くが王侯貴族等を対象とした高級食器等の生産を主としていました。
ローゼンタールもその流れから生まれたブランドでしたが、それまでのような過剰な装飾を避け、時代に合った機能美を追求して成功に結び付けました。
その後も時代の流行を採り入れつつ発展しますが、戦後はより芸術性や機能性・時代性を併せた物づくり「ローゼンタール・スタジオ・ライン」システム等を採用し、独自性を高めていきました。

スタジオラインには名だたるアーティストが参加

システムに参加したデザイナーは、サルバドール・ダリやタピオ・ヴィルカラ、ビョルン・ヴィンブラッド、ヴェルサーチ等の世界に名立たるアーティストばかり。
彼らはローゼンタールの時代を先取りするデザイン路線を確立させました。

伝統的な製法を守ることで産まれるローゼンタールの美しい食器

アンティーク ローゼンタール

 

とはいえ、ローゼンタールでは古典的な美しさも尊重しながら、新しさを追うことに価値が置かれました。
時に前衛的な作品も生みましたが、伝統的な製法に裏打ちされた製品の安心感も、世界で愛される理由の一つかと思われます。

創業者フィリップ・ローゼンタールのものづくり

ローゼンタール マーク

さて、ここから創業者であるフィリップ・ローゼンタールの生涯を追いながら、ローゼンタールの歴史をご紹介していきます。

17歳でアメリカに渡り、皿洗いから陶磁器バイヤーとなったフィリップ・ローゼンタールは、7年の修行後、ドイツに帰郷しました。
そして1879年にゼルプ郊外のエルカースロイト城に磁器絵付工場を設立し、ローゼンタール窯を創業します。
当初は家族経営規模でしたが、精巧で独創的な灰皿等で成功し、急速に発展しました。

絵付工場から製磁工場の建設へ

ローゼンタール プレート

 

1891年、フィリップは磁器そのものの製造をはじめるための工場を建設します。
また、1897年にはゼルプ西方のクローナハに追加の生産施設を作りました。
創業25年目の1904年には従業員は1200人を超えました。
そして1910年には磁器の彫像製作の為に王室工場の特権だった芸術部門を創設し、ローゼンタールのブランド名を高めます。

1916年、フィリップは二番目の妻と結婚し、その名を冠した正餐器セット「マリア・ホワイト」を発売。古典的な器のデザインに、
浮彫のみのシンプルな白磁が評判を呼び、ベストセラーとなります。同年には、のちの後継者、フィリップ2世も誕生しました。

困難な時代を乗り越えながら操業をつづけたローゼンタール

創業50年を迎えた1929年には、7000人の従業員が精巧な磁器作りに従事しました。ローゼンタール製品は世界で評判となり、高い人気を誇る輸出品となったのです。しかし、ナチス政権下の1934年にユダヤ人の血をひくフィリップは退社を余儀なくされました。そして1937年、82歳で死去します。
主を失った優良企業ローゼンタールは、ナチスの紋章ハーケンクロイツを窯印に加え、操業を継続させられました。

息子、ローゼンタール2世の参加でスタジオラインは更に活性化

スタジオライン ブランドロゴ

第二次世界大戦終了後の1950年、亡命していたフリップ・ローゼンタール2世が入社します。
当初は広告管理、のちには意匠管理となり、やがて販売責任者として製品開発に決定的な影響を与えるようになりました。
彼は芸術と実用の融合を掲げ、優れたアーティストによるデザインを導入して製品の改善に取り組みます。

そしていよいよ、スタジオ・ライン発表

デザイン重視のその考えは、新しい製品に相応しい発表・販売の場、スタジオ・ハウスの開設(1960年)やスタジオ・ラインの発表(61年)に結実します。
また、1967年には生産の自動化が図られた設備と、芸術指向に相応しい美しい外観を持つ工場も新設されました。

アーティストと共に作り上げられるローゼンタールの美しい食器

ローゼンタール パピルス

 

その後もローゼンタールはデザイン重視の路線を歩み、独創的な高級磁器メーカーとしての名を確固たるものとします。
2016年までに150人以上の著名アーティストがスタジオ・ラインに参加し、500以上の賞が与えられました。

1980年代終わり頃からは構造不況や消費減少に見舞われますが、設備の統合や生産の改善により乗り越え、
2009年からはアークトゥルス・グループの一員となりました。
2001年にフィリップ2世は他界しますが、彼が追い求めた創造的な物づくりは変わらず継続されています。

ローゼンタール磁器の技法・製法

ローゼンタールの製磁は、当初は手作業、のちに機械化・自動化が進められました。
成形は、職人が手作業で原型を製作後、樹脂等で親型が作られ、それを元に石膏鋳型が作られ使用されます。

素地づくり

ローゼンタール クラシックローズ

磁器粘土は機械粉砕された原料に水等を加えてドラムミルで更に粉砕され、磁気やフィルターで不純物を除去します。
油圧プレスで余分な水、真空プレスで空気を排出して素地の準備は完了します。
その後、等方圧プレスや鋳込み・プレス鋳造・機械ロクロ等により成形され、継ぎ目は刃物やスポンジで削られます。

施釉

釉薬は、手浸けや機械浸け・吹き付け等で施され、焼成は重ね積みが不要の短時焼成窯を使用。

絵付け

ローゼンタール スタジオライン

絵付は、手描きや転写、吹き付けが行なわれ、転写はコンピューターの使用で、正確で美しいものに改良されました。
また浮彫は、型と酸による腐食法があり、金彩と併用されることもあります。

アイテム

ローゼンタール 食器

 

 

 

茶器・食器・壺・花瓶等のほか、プレート(壁飾り)・彫像・置物(オブジェ)・人形(フィギュリン)・時計・腕時計・フォトフレーム・小箱・灰皿・燭台・照明・コートフック・小物皿等の様々があります。

絵付なしの白磁、マイセン風の草花紋等入り染付白磁、濃色地に色絵金彩が施されたセーヴル風、東洋的花鳥画・風景等を描いた色絵磁器風、単色地やそれが線のみで入れられたもの、写実的細密画が描かれるロココ式、古代ギリシャ風の連続紋等が用いられた新古典主義式、日本画等を採り入れたジャポニズム式、抽象的草花紋のアールヌーボー式、シンプルかつ洗練された美しさを持つアールデコ式、北欧的色絵、ポップアート風等があります。

マリア・ホワイトなど、ローゼンタールの代表作

白磁正餐器「マリア・ホワイト」、1894年発表でサンスーシー宮殿由来の色絵食器「サンスーシー」、1968年発表でヴィンブラッド作の金彩浮彫白磁「魔笛」、1969年発表で建築家ヴァルター・グロピウス作の機能美白磁「TAC」、1976年発表でサルパネパ作の丸型白磁「スオミ・ホワイト」、白黒版画を部分拡大したフォルナセッティ作の白磁「ジュリア(テーマ・バリエーション)」、ヴェルサーチ作の金彩色絵「パピヨン(ミトスシリーズ)」「マルコポーロ」のほか、「ベルグラヴィア」「ドリームチーム」等があります。

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